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上野通になれる! 公園をディープにめぐる30分のミニツアー開催
2019年11月9〜10日に上野恩賜公園(上野公園)で行われたスペシャルアートイベント「UENOYES 2019/FLOATING NOMAD」の会場では、上野公園がもっと好きになるミニツアー「30分 DE 公園めぐり『これであなたも上野通!』」も開催された。公園内の記念碑や神社などをガイドと一緒にめぐり、今まで見過ごしていた魅力に気づいてもらおうという企画だ。
教養講座から派生した「UENOYES」特別ミニツアー
発案したのは、青山学院大学コミュニティ人間科学部特任教授の山本裕一先生を中心にしたボランティアグループ。山本先生が講師を務める「国立教育政策研究所 社会教育実践研究センター」主催の「BuRaLi(ぶら〜り)e 上野」という教養講座から派生した。
「社会教育実践研究センターが上野公園のすぐ近くにあることから、講座は上野公園や周辺を歩いてめぐり、楽しみながら歴史や文化価値を学ぼうという内容でした。今日のミニツアーのガイドは、講座の終了後も有志で集い、勉強を続けてきた受講者たちです。彼らにとっては勉強の成果を披露する発表会でもあるんです」と山本先生は教えてくれた。
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ツアーの集合場所は、「UENOYES」のビジターセンター前。「BuRaLi(ぶら〜り)e 上野」は事前の申し込みが必要だが、「上野通!」ツアーは当日の申し込み。集合時間になるまで誰が参加してくるかわからない。山本先生が教える学生たちや「BuRaLi(ぶら〜り)e 上野」ボランティアガイドの佐竹美子さんらが周囲を歩く人たちに気さくに声をかけ、参加を呼びかけている。
「上野通!」ツアーは1日3〜4回。「UENOYES」の会場から30分以内に徒歩圏内の場所をめぐる。
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人と人を結びつける力を持つ上野の建物やモニュメント
11時から始まったのは、ボランティアガイドの一人、吉田知恵子さんが案内する「上野のお山に宿る神」ツアー。参加者9名と「花園稲荷神社」「穴の稲荷」「五條天神社」を訪れる予定だ。
スタートは赤い鳥居が海外観光客に人気の「花園稲荷神社」。境内に入ると、社殿前の小道から左に入ったところに洞窟がある。これが「穴の稲荷」だ。撮影禁止の場所だけに、ツアーの参加者は記憶に残そうとじっと洞窟を覗いている。その奥に鎮座していたのは、数体のかわいらしい狐の置物。現在、この場所は遺跡として残るだけで、お御霊はないそうだ。
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次に向かった「五條天神社」は流転の神社だった。上野公園内で何度も移転していたことを聞いて「ほおっ」という声も。今の場所に鎮座したのは昭和3年のこと。毎年、節分の日には医薬の神としてもっとも重要な「うけらの神事」が行われている。
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ガイドがいるからこそ気づけたのが、神社の隣の弓道場だ。高い垣根にさえぎられているため、教えてもらわなければ、気づかずに通り過ぎてしまっただろう。
説明を熱心に聞いていた80代のご夫婦にツアーの感想を聞いてみると、「上野公園にはよく散歩に来ていたが、五條天神社が薬と関係が深いことは初めて知りました」と笑顔を見せてくれた。
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午後からのツアー担当は、もう一人のボランティアガイド、朝倉文夫さんだ。この回には10名が参加。午前中より男性の参加者が多いのは、上野の「像」めぐりがテーマのせいだろうか。
上野恩賜公園と言えば西郷隆盛像が有名だが、他にも野口英世像や日本に公園の概念を伝えたボードワン博士像など、いくつもの銅像がある。説明を聞いていると、偉人たちの足跡を通じて、上野が日本の歴史と生活に深く関わってきたことがよくわかる。
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「上野通!」ツアーがユニークなのは、上野の歴史や文化を学んでいた側が教える側に回っていることだ。山本先生はこうも話してくれた。
「ガイドとして人に教えるようになると、どうしたら伝わりやすいか、どこから案内したらいいかと、能動的に上野と関わるようになります。また、案内役と参加者の間だけでなく、ガイドの間にも交流が生まれます。上野の建物や文化には、そんな人を結びつける力があるんですよね」
文/角田奈穂子(フィルモアイースト) 撮影/三吉史高
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- UENOYES 2019/FLOATING NOMAD
会期:2019年11月9日(土)~11月10日(日)
時間:11:00~18:00
会場:上野恩賜公園 竹の台広場(噴水広場)
WEB:https://uenoyes.ueno-bunka.jp/2019
※このイベントは終了しました。