東京都美術館の「上野アーティストプロジェクト2019『子どもへのまなざし』」と国立国会図書館国際子ども図書館の「絵本に見るアートの100年―ダダからニュー・ペインティングまで」という2つの展示会をきっかけに生まれた、両館の連携イベント。国際子ども図書館で開催された2019年11月30日の講演会に続き、第2弾として12月22日、国際子ども図書館の職員によるイベントが東京都美術館で開かれた。テーマは「子どもと楽しむ美術―絵本の読み聞かせとともに―」。会場では、子どもたちが熱心に本の読み聞かせに聞き入った。
東京都美術館交流棟のアートスタディルームで行われた「子どもと楽しむ美術」は、国際子ども図書館の職員が絵本の読み聞かせ、美術に関する絵本の紹介、国際子ども図書館で開催中の展示会「絵本に見るアートの100年」の紹介をするというもの。部屋の中央にはマットが敷かれ、その前に読み聞かせ用の大型絵本がイーゼルに立てかけられている。子どもたちがのびのび過ごしながら、お話が聞けるようにという配慮だ。
児童サービス課児童サービス運営係長の本橋麻里子さんによる読み聞かせの1冊目は、東京都美術館の展覧会「子どもへのまなざし」にちなんで、子どもが生き生きと描かれている『はじめてのおつかい』(筒井頼子作・林明子絵/福音館書店)。5歳のみいちゃんが牛乳を買いに初めて一人でおつかいにでかけるお話だ。
お話が始まるとすぐに子どもたちは、物語にのめり込んだ。無事におつかいができるか、みいちゃんの不安と緊張に共感する気持ちが子どもたちの背中から伝わってくる。何とかおつかいを終えたラストシーンでは、ほっと緊張感がほぐれたようだ。
もう1冊のお話は、美術に関連して、絵を描く道具の一つ、クレヨンが出てくる『ぼくのくれよん』(長新太作・絵/講談社)。クレヨンで自由に描く楽しさが、開いたページから溢れんばかりに伝わってくる。子どもたちは言葉の音のリズムを楽しみ、カラフルな絵に目を見張っていた。
2冊の読み聞かせが終わると、美術館に関する本の紹介に。話の面白さに我慢できなくなったのだろう。もっとよく聞きたい、見たいと、椅子に座っていた男の子が演者のすぐ前へ移動し、マットに座り込んだ。
子どもたちが「見たー!」と歓声を上げたのは、絵画の魅力を紹介する本のなかで、ムンクの《叫び》のページを開いたときだ。2018年度に東京都美術館で開催された「ムンク展」は、子どもたちにも大人気だったようだ。
イベントの後半は、資料情報課課長補佐の加藤眞吾さんが国際子ども図書館と「絵本に見るアートの100年」展を紹介。展示されている代表的な絵本とその概要について話しながら、ダダやシュルレアリスム、ロシア・アヴァンギャルドなど、20世紀の代表的な美術運動についてひも解いていく。小さな子どもにも伝わるよう、言葉を選びながらゆっくりと話すその語り口に、子どもたちも真剣な表情で聞き入っていた。
解説を聞いていると、グラフィック・デザインの要素も取り込むなど、絵本が美術やデザインの分野で重要な存在というだけでなく、読む人の想像の世界を自由に広げてくれる大切な役割を果たしていることがよくわかる。会場には、実際に触って読むこともできるように、現物の絵本も用意されていた。
文/角田奈穂子(フィルモアイースト) 写真提供/国際子ども図書館
- イベント一覧
■上野アーティストプロジェクト2019「子どもへのまなざし」
会期:2019年11月16日(土)~2020年1月5日(日)
会場:東京都美術館 ギャラリーA・C
※この展覧会は終了しました
■絵本に見るアートの100年―ダダからニュー・ペインティングまで
会期:[前期]2019年10月1日(火)〜2019年11月17日(日)
[後期]2019年11月19日(火)〜2020年1月19日(日)
会場:国際子ども図書館 レンガ棟3階 本のミュージアム
※この展示会は終了しました。