和太鼓、獅子舞、寛永寺。トーハクに縁起物が勢ぞろい!

和太鼓、獅子舞、寛永寺。トーハクに縁起物が勢ぞろい!

お正月の恒例行事といえば初詣。令和になって初めて迎える新年ということで、今年はどこも大変な人出だったが、賑わったのは神社仏閣だけではない。上野には知る人ぞ知る、人気の初詣スポットがある。そこは、“日本美術の殿堂”ともいわれる東京国立博物館(トーハク)。トーハクが毎年開催しているお正月の特集「博物館に初もうで」では、和太鼓や獅子舞など日本の伝統芸能が披露されるほか、干支や吉祥にちなんだ所蔵品の展示も行われ、地元はもちろん、各地から多くの人でごった返す。「ニッポンのお正月」を満喫したいなら、来年はぜひトーハクへ。縁起物づくしで幸せな気分を味わえます。

正月2日。「博物館に初もうで」の新春イベントが開かれているトーハクに足を踏み入れたとたん、威勢のいい和太鼓の音が聞こえてきた。東洋館の前に設えられた舞台の周りは大変な人だかりで、たくさんの頭の間からのぞき込むのがやっとという賑わいだ。躍動感たっぷりに太鼓を打ち鳴らすのは、女性中心の和太鼓チーム「湯島天神白梅太鼓」の皆さん。湯島天神白梅太鼓は、湯島天神(東京都文京区)の梅園で時を告げる太鼓として、平安時代から伝わる「時太鼓」の響きを受け継いでいるという。メンバーの年齢層は幅広く、中には親子で所属している人も。ぴったり息のあった演舞に、会場からは盛大な拍手が送られた。

和太鼓に続いて観衆を魅了したのは、「葛西囃子中村社中」の一行だ。葛西囃子の起源は、今から200年ほど前の江戸時代享保年間。それから100年ほど経った江戸末期に、葛西囃子から神田囃子、本所囃子、深川囃子、佃囃子など多くのグループが生まれ、江戸の祭りにお囃子が欠かせない芸能になったとか。葛西囃子は江戸の祭囃子の源流といわれる由縁だ。神楽や獅子舞に大黒様の登場など、新春イベントらしく、縁起のいいものづくしの演舞。「毎年これを見ると正月を実感する」と、感慨深げに話す来場者も。

本館正面の大階段に飾られたいけばな(真生流・山根由美氏)。建物の荘厳さに引け劣らない、どっしりとしたたたずまいだ。新春にふさわしい爽やかさを感じるのは、生花ならではだろうか。じつは、虫が入り込むのを防ぐため、博物館・美術館では生花の持ち込みは禁止なのだ。所蔵品11万件超、うち約3000件を代わる代わる展示しているトーハクは、ふだんから防虫管理を徹底。正月にいけばなを飾る際も、虫がつかないよう、殺虫処理をはじめ細心の注意を払っているという。

毎年子どもに大人気のカレンダー付きワークシート(※)。子どもたちのお目当ては、干支のネズミにちなんだ「鼠草紙すごろく」。「にんげんとけっこんしたい」と願う主人公のネズミ・ごんのかみが、付き人のネズミ・さこんのじょうと旅をしながら願いを叶えていく物語仕立てになっている。ゴールはなんと、「ねこのおぼうさんと高野山でしゅぎょうする」! じつはこのストーリー、江戸時代に流行った御伽草子「鼠草紙」をもとに作られている。1月2〜3日の各日先着3000人限定で、11時から配布スタート。取材した2日はお昼過ぎに配布終了という人気ぶりだった。
※配布は終了しました。

本館のミュージアムショップでは「新春バーゲンセール」と銘打って、図録などの書籍が特別価格で販売されていた。中には半値以下の図録もあり、次から次へと飛ぶように売れていく。こちらも恒例の企画で、このセールを目当てに毎年訪れる人も多いそうだ。

上野恩賜公園はもともと天台宗の名刹・東叡山寛永寺の敷地だった。その名残は上野公園界隈のあちこちに見られ、周辺には今も寛永寺の敷地が広がっている。トーハクの裏手にある根本中堂に行くには、普段はトーハクの周りをぐるりと歩いて行かなければいけないが、正月の2〜3日だけは特別なルートが登場する。トーハクの西門が開放され、そこを通って近道できるのだ。

トーハクの西門からゆっくり歩いて3~4分。トーハクの賑やかさとは打って変わって、静かな正月の風情が漂う寛永寺根本中堂にたどり着いた。ここでは、徳川歴代将軍の肖像画や四天王像を公開。ゆったり初詣をしたい人にはおすすめのスポットだ。

「博物館に初もうで」の締めくくりは、トーハクの観覧券の半券(当日分)と引き換えに手渡された「散華(さんげ)」。「御葩(おはなびら)」ともいわれ、寛永寺の法会で蓮の花びらの代わりに使っているものだそう。本来は仏を迎える道場を清め、来迎する仏の徳をたたえたり、供養したりするためにまくものだが、お守り代わりに大切にしておくといいらしい。最後に幸運のお守りをもらえるとは、なんて縁起のいいイベントだろう。来年の「博物館に初もうで」、皆さんも訪れてみてはいかが?



文/湯田陽子 撮影/上野文化の杜新構想実行委員会

博物館に初もうで 新春イベント

会場:東京国立博物館
会期:2020年1月2日(木)~1月26日(日)
時間:9:30~17:00 *金・土曜日は9:30~21:00
〈新春イベント〉
会期:2020年1月2日(木)~1月3日(金)
和太鼓/獅子舞/クラリネット・コンサート/いけばな
*いけばなの展示は、2020年1月2日(木)~1月13日(月・祝)

※このイベントは終了しました。

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