美術館や博物館などの文化施設、公園内の自然、近隣の商店街も含めて、丸ごと「上野」を楽しむために生まれたのが、オンラインコミュニティ「みんなのうえの」。地域SNS「ピアッザ」を活用し、オンラインでもオフラインでも「人」を結びつけている。「みんなのうえの」が生まれたきっかけや活動の様子を、2020年度の運営を担当しているコミュニティデザイナーの3人に聞いた。
――オンラインコミュニティ「みんなのうえの」は、どのような活動なのでしょう?
近藤乃梨子さん 上野文化の杜新構想実行委員会の活動が広がるにつれて、イベントで直接、顔を合わせるコミュニケーションだけでなく、上野公園やその周辺を訪れる人、近隣に住んでいる人を含めて、もっと幅広く「人」をつなげる交流の場が欲しいね、という話が出るようになりました。
そこで、オンラインでも交流の場を作ることになったのです。そのツールとして活用されているのは、「ピアッザ」という地域情報交換アプリです。「ピアッザ」のSNS機能を活用してオンラインで情報交換したり、イベントの参加者を募ってオフラインでも交流したりしています。
――2019年度にスタートしてから、どのような活動をしているのでしょうか。
近藤さん 日常的には「ピアッザ」の「上野エリア」カテゴリーで交流しています。イベントや街の情報を交換するだけでなく、ときには上野界隈を散歩したときの感想や写真をアップするだけのことも。誰でも投稿が可能ですし、気軽におしゃべりする感覚ですね。
濱野かほるさん 私たち3人もメンバーとして日々のできごとを投稿しています。それに加えて、活動を盛り上げるため、月に1回ほどのペースでイベントも企画しています。博物館動物園駅の見学ツアーや、「UENOYES」ではオリジナルの見学ツアーを催したりしました。
上田紗智子さん ただ、新型コロナウィルスが流行してからは、実際に顔を合わせるイベントが難しくなってきたので、美術館などの文化施設をバーチャルで巡ったりするオンラインイベントを企画することが増えました。感染者数が落ち着いた去年の秋頃は、上野公園の自然をめぐり、「藝大Hedge」を知るイベントを企画したこともあったんです。
――今、力を入れているのは、どんな活動ですか?
濱野さん 「ピアッザ」に投稿していただいた情報を地図にマーキングして作る「上野マップ」を充実させることです。
近藤さん 口コミならではの情報が詰まった上野マップを見ながら歩くと、見逃していたお店の魅力に気づくなど、上野を多面的に知ることができます。参加者のお気に入りの風景を教えてもらうこともあります。一般的なガイドブックには載っていないパーソナルな情報を共有できるのも魅力ですね。
――オンラインイベントも積極的に開催されていますね。
上田さん 2020年9月は、VRを使って、国立国会図書館国際子ども図書館の建物の内部をオンラインで見ていただくイベントを企画しました。VRを使ったオンライン配信は初めての試みだったんですけれど、打ち合わせを重ね、事前に何度も練習して当日に臨みました。不安もありましたが、終わってみれば好評で、とてもいいイベントになりました。
近藤さん 休館していた期間に国際子ども図書館が撮影し、再開館後も入館制限中で館内ガイドツアーを休止していたなかで、同館がHPでVRコンテンツを公開していたんです(※)。せっかくのコンテンツをもっと多くの人たちに見てほしいという気持ちから企画したイベントでした。
――これからはどう活動を広げていきたいと考えていらっしゃいますか。
近藤さん 私たちが意識しているのは、初めてアクセスした人でも参加しやすい雰囲気を作ることです。気軽にたくさんの人に参加してもらいながら、上野にもっと親しみを感じてほしいなと思っています。
濱野さん そうですね。日常の些細なことでいいので、気軽に投稿してもらえれば……。一つひとつの情報は小さくてパーソナルなものでも、数が集まると、「集合知」のようなものが生まれるんです。世界に一つしかない上野のガイドマップをみんなで作り上げるのは、とても素敵だと思います。
上田さん 地域のみんなで支え合う活動は、コロナ禍の今だからこそ、より大切になっていると思います。若い世代の参加者が少なめなので、若い人たちも含めて、もっと幅広く、いろいろな方たちに参加してもらえればうれしいですね。
※国際子ども図書館のVRの公開は2020年12月28日で終了しました。
文/角田奈穂子(フィルモアイースト) 写真提供/みんなのうえの(*を除く)